俳句の殿堂

萬翠荘 ホームに戻る俳句の殿堂TOP~俳句の殿堂~ 深海

深海(シンカイ)

結社理念

深海冊子
第1に俳句は自由である。20世紀は様々な価値や神話の崩壊した時代であったがいまだ人々は残された神話に拘束されている。神話から自らの心を開放しなければならない。
第2に俳句は志であり、人であり人格である。美しいものを美しいと感じ、哀しいことを哀しいと感じる素直な感動をしなければならない。
第3に俳句は抒情である。客観という厳に心の言葉を刻み込もう。俳句は天地自然の命の輝きを詠う詩である。

主宰者

深海主宰 中村正幸
中村 正幸(ナカムラ マサユキ)
昭和18年愛知県生まれ。
平成元年「寒雷」入会。平成2年「寒雷」同人。平成12年「深海」創刊主宰。朝日俳壇賞、第3文学の森大賞受賞。
現在、深海主宰「寒雷」同人、現代俳句協会 東海地区副会長。読売新聞「とうかい文芸」俳句選者。

連絡先

住所
〒445-0853 愛知県西尾市桜木町4丁目51番地
FAX
0563-54-2125

主宰の100句

1 なはとびのつづきは畳長き夜
2 春愁はいつも何かに触れてをり
3 剥落の駅名撫づる帰省かな
4 崖の笹冬霧の音のがさざる
5 春愁の裏返しても薬瓶
6 走りゆく蟻夕焼けしこと知らず
7 満月に多感となりし山の百合
8 ひとり子の蟻を見るにも父を呼ぶ
9 深海も目覚めよとまた稲光り
10 接岸の流氷なほも陸を押す
11 受験生みな深海の貌をもつ
12 美しき汗の時間を共有す
13 帰省子のすぐに素足となりにけり
14 群衆の同じ耳持ち夕焼けぬ
15 霧の手がしづかに触るる貨車の胴
16 何の淋しさ梨剥指の濡れしまま
17 職替へし日も天の川見えざりき
18 埋火のほか父の眼を知らざりし
19 元日の闇に時間の充満す
20 鷹の眼のすでに越えをり分水嶺
21 大夏天充実感即孤独感
22 月の前全人格が影となる
23 ていねいな人の一生冬桜
24 三億年生きてごきぶり叩かるる
25 刻かけて水に映りぬいととんぼ
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26 生くるとは遺さるること野分中
27 父の日の父の世界に踏み込まず
28 想像力なくてはんざき進化せず
29 白桃にさまらぬものしたたりぬ
30 わが触るるまでは冬木でありにけり
31 骨拾ふわが心中の雪起こし
32 正月の位置に万物つきにけり
33 万物の生死西日のすわりをり
34 万緑の大きな息の中にあり
35 絶海のしづけさにあり寒卵
36 描きかけの枯れ木の枝が鳴りつづけ
37 鮟鱇のどこを切つても海鳴りす
38 人間といふ淋しさに注連飾る
39 冬蜂のよくよく死んでをりにけり
40 肖像の眼を凩へ向けて貼る
41 彗星の逃げつづけゐるさくらかな
42 淋しさに水母は海を刺しにけり
43 背かれしひとみの如く沼涸るる
44 釘凍てて影を失ふまで打たる
45 ねんねこのどこを突いても笑ひけり
46 祈り知るもののしづけさ一冬木
47 短日の脚また浅く組みかふる
48 滅びゆく銭亀眠りつつ乾く
49 セロハンの音でつつみしシクラメン
50 母叱るさびしさ松の過ぎにけり
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51 入れし刃をしめつけてをり茄子の紺
52 山芋を山の角度に置きにけり
53 うららかや貌をはづして猫眠る
54 人間の毛を逆立てて毛虫焼く
55 鉄棒の真一文字を灼けてをり
56 ふるさとのよく見ゆる日や蒲団干す
57 寒柝を打つ新しき闇に向け
58 玻璃割れて春こなごなとなりにけり
59 闇ふるひ落として白し夏衣
60 夕焼の溜り場バイクを放置さる
61 人間に生きものの息炎天下
62 人の眼を遊び場とせり熱帯魚
63 全身の影をかぶせて螇蚸とる
64 神の塵まりたるものを踏みて立つ
65 鮭の鼻曲るふるさと近づきて
66 セーターの穴に指入れ話しをり
67 角と角ぶつかつてをり受験絵馬
68 箸置きに涼しく箸の横たはる
69 ぽつぺんと鳴り出しさうなゑくぼかな
70 こだまするやうな白さや新日記
71 つちふるや残像となる岬馬
72 寒肥をのせて地球の自転せり
73 かなかなや声たて締まる血圧計
74 秋愁の笑ひ袋を押してやる
75 しんしんと蜂のむくろが冬日欲る
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76 スピーカーの音割れものの枯れにけり
77 風光る抱擁解かぬ道祖神
78 道草の色となりけり麦の秋
79 てのひらに濡れてをりけり目高の死
80 全員がさはりメロンのしまはるる
81 しぐるるや天地無用の赤き文字
82 一頭の冬がころがる盆地かな
83 うららかや叩いてどかす牛の尻
84 野火打ちし棒や匂ひの中に捨つ
85 人違ひのやうに初蝶我を去る
86 花冷や笑ふことなき魚の貌
87 あを空のあをもみ合ひて蝶となる
88 春愁の片手でほどく蝶結び
89 泳ぎゐるままに金魚の掬はるる
90 昭和いま涼しき距離となりにけり
91 握りたる鮎のちからが押し返す
92 人に振るハンカチいつか我に振る
93 八月を見つめつづける柱かな
94 鳥渡るみちのく空を失はず
95 秋ともし湯呑みのあとの丸く濡れ
96 空蟬の背を月光のなをも裂く
97 落日の捨て場所となる枯野かな
98 来し方を覚えてをりし毛糸解く
99 冬麗の真綿のやうな睡魔かな
100 野の色のうるみ出しけり七日粥

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