俳句の殿堂

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ににん

結社理念

ににん冊子
批評眼を持つ俳句作家を目指す。

主宰者

ににん主宰 岩淵喜代子
岩淵 喜代子(イワブチ キヨコ)
1936年東京生れ。
「鹿火屋」「貂」を経て、現在同人誌「ににん」代表。
2001年、句集『螢袋に灯をともす』により四季出版「俳句四季大賞」受賞。著書・句集多数。エッセイ集『淡彩望』・評伝『頂上の石鼎』他。
俳人協会・現代俳句協会会員・ペンクラブ会員・文藝家協会会員。

連絡先

住所
〒351-0023 埼玉県朝霞市溝沼5-11-14

主宰の100句

1 初蝶と同じ高さを返しゆく
2 朝の椅子欅の冬を迎へけり
3 滲みでてくる鶏頭の中の闇
4 月山の木の葉かぞへて寝ねむとす
5 まんさくは鬼の振りむいてゆきし花
6 荷がゆれて夕日がゆれて年の暮
7 蝙蝠やうしろの正面おもひだす
8 父母を忘れて暮らす栗の花
9 逢ひたくて螢袋に灯をともす
10 空腹や海月はゆらす身のすみずみ
11 西ベルリン東ベルリン明易し
12 ブランデンブルグ門据え麦の秋
13 花槐ゲーテの家の時計鳴る
14 ポンペイの蜥蜴はいつも濡れてゐる
15 座りても立ちても秋の水平線
16 縋る子をすがらせておく秋の暮れ
17 座布団のごとく鮟鱇置かれをり
18 座布団をいまは枕に兼好忌
19 春深し鳥に背筋のあることも
20 にはとりは春の嵐の下くぐる
21 カステラと聖書の厚み春深し
22 魂も柘榴もひとつとかぞへけり 
23 穂薄も父性も痒くてならぬなり 
24 冬の宿風見るほかに用もなし 
25 冬海を眺める玻璃に蝿もゐる
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26 とつぜんに櫟林の落葉どき
27 ストーブに貌が崩れていくやうな
28 サーカスのテントまるごと冬灯 
29 水仙に屈みてかがみきれざるよ
30 生きること死ぬことそれより鰊群来
31 三十もあれば風船われを運ぶ
32 抱へたるキャベツが海の香を放つ 
33 待つことに馴れて大きな蝸牛 
34 緑陰を大きな部屋として使ふ
35 空蝉も硝子の仲間に加へけり 
36 夕暮は鯔の海なり手をつなぐ
37 登高やにはとりに会ひ馬に会ひ
38 葡萄干す民に砂漠の地平線
39 初冬の舟の食事の見えにけり
40 目が覚めて夜が続くなり神の留守
41 垣低く鬼切といふ冬の宿
42 同じ灯をみんなで浴びる茸鍋
43 短日の最後にたたむ袋帯 
44 三月のなぜか人佇つ歌舞伎町
45 ゆく春のふと新宿の曇空
46 春深し真昼はみんな裏通り
47 歌舞伎座に幕間ありて椿咲く
48 眠れねば椿のやうな闇があり
49 陽炎や僧衣を着れば僧になり
50 花果てのうらがえりたる赤ん坊
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51 薔薇園を去れと音楽鳴りわたる
52 嘘のやう影のやうなる黒揚羽蝶
53 青鷺は大和の国の瓦いろ
54 三角は涼しき鶴の折りはじめ
55 津津と鳴き瑠瑠と応へる螢ならむ
56 虫追ひの火を火が追ひて煙たかり
57 雫する水着絞れば小鳥ほど
58 百年は昨日にすぎし烏瓜
59 秋霖の最中へ水を買ひに出る
60 実石榴や谷中に住みし小説家
61 運命のやうにかしぐや空の鷹
62 枯菊の匂ひや祖母の居るごとく
63 古書店の中へ枯野のつづくなり
64 短日の象を洗つてをりにけり
65 芽キャベツや人棲む星はひとつきり
66 紫陽花に嗚呼と赤子の立ち上がる
67 次郎より太郎のさびし桐の花
68 空蟬を鈴のごとくに振つてみる
69 夜が来て蝙蝠はみな楽しさう
70 箱庭と空を同じくしてゐたり
71 今生の螢は声を持たざりし
72 鷺消えて紙の折目の戻らざる
73 登山靴命二つのごと置かれ
74 鳥は鳥同士で群るる白夜かな
75 出航のあとは海月のたまり場に
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76 浜豌豆咲けばかならず叔母が来る
77 盆踊り人に生まれて手を叩く
78 月代や昨日想へば茶の冷ゆる
79 月光の届かぬ部屋に寝まるなり
80 鬼の子や昼とは夜を待つ時間
81 鬼の子に見せてあげたい万華鏡
82 城山は風のかたまり迢空忌
83 萩芒小袖を振つてみたかりき
84 ふところに入らぬものに仏手柑
85 地中には蟻の楼閣障子貼る
86 ゆふぐれは椋鳥さわぐ木のありぬ
87 地獄とは柘榴の中のやうなもの 
88 狼の闇の見えくる書庫の冷え
89 寒林のこんなところに喫茶店
90 万の鳥帰り一羽の白雁も
91 尾があれば尾も揺れをらむ半仙戯
92 幻をかたちにすれば白魚に
93 春愁のときどき薬飲む時間
94 花ミモザ地上の船は錆こぼす
95 十二使徒のあとに加はれ葱坊主
96 月夜茸母が目覚めてくれぬなり
97 葉牡丹として大阪を記憶せり
98 晴れきつて鴨は水輪の中に居る
99 風呂吹を風の色ともおもひをり
100 春の闇鬼は手の鳴るはうに来る

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