萬翠荘 ホームに戻る|俳句の殿堂TOP|~俳句の殿堂~ 九年母
九年母(クネンボ)
結社理念
「九年母」は大正13年10月、和歌山市にて創刊された。昭和5年に山本梅史から雑詠選者を引き継いだ五十嵐播水が、昭和9年に本拠を神戸市に移転し主宰となった。高濱虚子は播水の温和で静謐な人柄を愛され、播水も虚子を生涯の師として仰いだ。虚子の提唱された俳句理念「花鳥諷詠・客観写生・平明余情」を指導方針として掲げた播水の考え方は、哲也・伸一路と受け継がれ今日に至っている。月刊誌「九年母」の題字も、昭和22年に虚子から頂いたものである。
主宰者
小杉 伸一路(コスギ シンイチロ)
昭和22年 滋賀県に生まれ
昭和60年 「九年母」入会
平成18年 日本伝統俳句協会「花鳥諷詠賞」佳作1席入賞
平成20年 「ホトトギス」同人
平成24年 「九年母」副主宰に就任
平成27年 同 主宰に就任
日本伝統俳句協会会員
兵庫県俳句協会副会長
神戸芸術文化会議会員
連絡先
住所〒659-0031 兵庫県芦屋市新浜町2-4-301
主宰の100句
1 | これ以上無き程赤き蜻蛉かな |
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2 | 所在無きとは朝顔の蔓のこと |
3 | 火の国の乙女らの灯の踊りかな |
4 | 喰はれたる福祉の里の秋の蚊に |
5 | 駅頭に市長も立たれ赤い羽根 |
6 | 箱に受く善意の重さ赤い羽根 |
7 | 磴登る一段毎に秋日踏み |
8 | 千段を登り切つたる秋の晴 |
9 | ひと雨の進めし摩那の紅葉かな |
10 | 調教の一騎花野を来たりけり |
11 | 鷹渡る災禍の多き年なれど |
12 | これからの山の生計や暮の秋 |
13 | 初鴨の眼厳しく着水す |
14 | 大綿の己が光の中を飛ぶ |
15 | 石蕗咲かせ老先生の町医院 |
16 | 鷹舞ひて里山の空拡げをり |
17 | 隼の胸吹き分けて崖の風 |
18 | 羽畳むより隼は弾丸に |
19 | 叡山も比良も包みて初時雨 |
20 | 分校の子等の切火や炉を開く |
21 | 炉開や薪割る音の朝より |
22 | 冬帽を目深に風の波止に釣る |
23 | 浪高し磯の千鳥を発たしめて |
24 | 渇きにも飢ゑにも耐へて冬の鳥 |
25 | 寒禽の一羽にて生く定めかな |
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26 | 長靴を伝ふ熱気や火事見舞 |
27 | 数へ日といへども日々を着実に |
28 | 平和とは雲一つ置く初御空 |
29 | 穏やかな明石の門波初景色 |
30 | 風花す風の凝りたるものとして |
31 | 冬木の芽堅し未来をその内に |
32 | 春を待つ息吹は濠の水面にも |
33 | 赤鬼は防犯課長豆を撒く |
34 | 寒明くるリレーのバトン渡すごと |
35 | 寒明けてまた一つ用頼まれし |
36 | たてがみに躍る光や春隣 |
37 | 海光に影絵となりて海苔の舟 |
38 | 夜の底へ雪崩の落つる響きかな |
39 | 里山の風に解けし初音かな |
40 | 上手とも下手とも言へぬ初音かな |
41 | 枝に結ひし神籤を伝ふ梅の雨 |
42 | 眠りより覚めし節分草の色 |
43 | 朝霧の底より現れて蜆舟 |
44 | 煌めける朝日の湖へ蜆舟 |
45 | 逞しき力を秘めて牡丹の芽 |
46 | 漲れる命の色や牡丹の芽 |
47 | 暖かや雑木林の膨れ初む |
48 | 山径を下る歩軽し百千鳥 |
49 | 遠目にも夜目にもそれと雪柳 |
50 | 花ミモザ空蒼ければ蒼きほど |
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51 | 麗らかや瞼閉ぢれば日の光 |
52 | 降り足りし土の膨らみ土筆生ふ |
53 | のどけしや釣人に時止りたる |
54 | 癒えし身に眩しき花よシクラメン |
55 | 抱き上げし子の片ゑくぼ若葉風 |
56 | 未だ慣れぬ寮の生活若楓 |
57 | 応援の発声練習風薫る |
58 | 新緑の森に鳥語を聞く集ひ |
59 | 井戸水を汲みしは昔豆の飯 |
60 | 身じろがず太公望も青鷺も |
61 | 初めての給与明細若葉風 |
62 | 匙に取る音も新茶でありにけり |
63 | 一声で聞き分く鳥語森青葉 |
64 | 鰺刺の時折落つる港かな |
65 | 灯を消して火蛾を闇へと戻しけり |
66 | 黴の香や虚子命名の地酒買ふ |
67 | 黴の香や陀羅尼助売る峰の町 |
68 | 鳴き継げる低き鳥語や五月闇 |
69 | その底に蠢く気配五月闇 |
70 | 魚跳ねて梅雨の晴れ間を喜べる |
71 | 良く冷えてビールの待つてゐてくれし |
72 | 流れ来る風の隙間を糸とんぼ |
73 | 殉職といふ別れあり百合の花 |
74 | 白扇を結界として初対面 |
75 | 夏草や孤高といふはゴリラにも |
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76 | 鐘の音の響く黙祷海紅豆 |
77 | 雲海といふ俗塵の無き世界 |
78 | 凉新たとは湖渡る風のこと |
79 | この沖に潜む大地震秋暑し |
80 | 風紋の丘に聞こえて秋の声 |
81 | 人声のいつもどこかに秋の山 |
82 | 流灯に照らし出されし顔若し |
83 | 朝顔の拳のごとく咲き終はる |
84 | 空の紺鷹の渡りを待つばかり |
85 | 朝の気を鋭く裂きて鵙高音 |
86 | 鵙の贄にも好物のあるらしく |
87 | 一と雨に季の深まりし花野かな |
88 | 潰えたる家居の跡も一花野 |
89 | 秋晴を使い尽くせし寝息かな |
90 | 二人分有れば足る田や稲雀 |
91 | 電線に群れて零れて稲雀 |
92 | 漂泊は詩人の心月に雲 |
93 | 冬近き雲を引き寄せ淡路島 |
94 | 主の名留めぬ露の古墳かな |
95 | 一枚の大秋晴や須磨淡路 |
96 | 歩いても行けさうな距離秋の潮 |
97 | 檻に聞く人の世の音白梟 |
98 | 檻に棲むものに冬眠許されず |
99 | 絶壁に掴み掛りて冬の濤 |
100 | 冬枯れの野を覆ひたる星座かな |