俳句の殿堂

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航標(コウヒョウ)

結社理念

航標冊子
十七文字を広義に解し、写実を通して現代の抒情を追求する。

主宰者

航標主宰 吉田 汀史
吉田 汀史(ヨシダ テイシ)
昭和6年徳島市生まれ。
昭和23年今枝蝶人主宰の「向日葵」に入会。昭和40年今枝蝶人「航標」創刊、これに参画。昭和46年能村登四郎主宰の「沖」入会、のちに退会。昭和57年今枝蝶人死去により、「航標」主宰を継承現在に至る。俳人協会会員、日本詩歌文学館振興会評議員。

【句集】
『浄瑠璃』『遊猟』『一切』『海市』ほか。
【エッセイ集】
『三畳雑記』『一句の周辺』ほか。

連絡先

住所
〒770-0868 徳島市福島2丁目4-47

主宰の100句

1 浄瑠璃や母は羅着て泣けり
2 月明をねむりて流れゆくごとし
3 桃すする家族にまじる遺影かな
4 月光に母の針箱遣りけり
5 島へゆく船の畳に紫蘇の束
6 白日傘漂着のごと燈台へ
7 ゆふがほの花さかづきに父あらば
8 初刷の少しずれたる美女と猫
9 白酒に母の裸形をおもひ出づ
10 藁草履二足雪ふる山に向く
11 あを空のゆふ空となる落葉籠
12 日の丸の闇に垂れゐる姫始
13 顔に手を当てて泣きをり梅擬
14 菊に菊ふれて枯れゆく乃木神社
15 三伏の白紙につつむ絵蠟燭
16 生きてまた踊りの鉦を打ち叩く
17 葛の花をとこ狂ひを語りぐさ
18 弟のみなとに埋めし桃の種
19 夜泳ぐ砂に女を残し置き
20 月明の帆柱ならぶもらひ乳
21 海暮れて精霊を呼ぶ踊りの手
22 火事跡にくれなゐの衣引き摺れり
23 帽子屋のそこより春の港かな
24 浜木綿やわれに櫓を漕ぐ覚えあり
25 炎天をゆく眼の玉をひとつ病み
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26 初日浴ぶすでに遍路の姿して
27 燃え尽きるまであきらかに櫻榾
28 洛北は雪漬物のむらさきに
29 はくれんのひらきて影も地にひらく
30 ゆゑ知らぬ手首の傷や梨の花
31 飛魚の海を佛教渡来せり
32 悪書など積みて昼寝の枕上
33 首に蛇巻きふるさとを恋ふ男
34 藪からし母の嫌ひしばくち打
35 どぜう鍋金閣寺より戻りきて
36 毛虫焼く火や沖縄の焼かれし火
37 柚子味噌の如き情けのあれよかし
38 絶海をいまも流るる母の雛
39 むかし男のなさけつれなき盆の唄
40 尋ね人尋ねつづける天の川
41 夭逝の名は鶴吉や地蔵盆
42 戦死者の妻も死にけり冬干潟
43 戯れ歌に忍ぶまことや猫の恋
44 深海に軍艦腐る磯遊び
45 鴎外の髭漱石の髭山笑ふ
46 殺されし木偶が寝てゐる秋の昼
47 煤逃げにパチンコの玉出るは出るは
48 雪女郎なりしか閨の濡れゐたる
49 夜も黄沙降るやいづこに放火犯
50 十六歳で買ひし聖書や白鳥座
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51 火吹竹火のことのみを思ひ吹く
52 一盞の酔ひ頬にあり山ざくら
53 眼の玉の数おそろしき花火の夜
54 男には意地こそいのち唐辛子
55 花水引千本あつめ枕縫へ
56 鶴に餌を撒くゆふぐれの美少年
57 からだから尿の出てくる朝櫻
58 清水次郎長が大好き一番茶
59 尺蠖に瀬戸大橋の桁はづれ
60 烏瓜提げていかにも長い顔
61 白魚やわれ生みくれし母一人
62 短夜のゆめ銃殺の銃一列
63 秋遍路硫黄島から来たと言ふ
64 この世には無き花咲かせ水中花
65 月明の喉を落ちゆく生卵
66 サルトルもカミュも遥か鷹渡る
67 いつの世も極道寒く恥づかしき
68 雪女郎いくさに死んだ男呼ぶ
69 天皇の通りし道の逃水追ふ
70 死ぬために病院へ行く蝶の昼
71 七輪を出せこの秋刀魚俺が焼く
72 老の身をタンゴに反らす一遍忌
73 獵銃も女も寝たる畳かな
74 一休の杖に淑気のされかうべ
75 傀儡師消え戦争が始まった
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76 永らへてお茶漬こぼす櫻桃忌
77 老斑の手にももいろの蝿叩
78 うつとりと桃の奥には桃の種
79 蛇穴に入る一本の肉の棒
80 扉から扉へ帰る秋の暮
81 また一人遍路を呑みぬ夏の山
82 一汁に一菜なれど夏料理
83 燈台の内部を登る我鬼忌かな
84 秋風の鰐を見にきしだけのこと
85 ふりしきる雪ふりしきる一切無
86 花すすき乳房片方出して見す
87 近松忌手に掛けるとは殺すこと
88 鯛焼のはらわた黒し夜の河
89 底知れぬ井戸のありけり探梅行
90 戰死とは夭折のことゆきのした
91 マネキンの胸隆隆と寒念佛
92 海市より火柱立つはなにごとぞ
93 観音に抱かるる夢を朝寝して
94 はなれ瞽女おりんに遭ひぬ夢始め
95 恋猫の舌めらめらと夜を待てり
96 蟬しぐれ防空壕は濡れてゐた
97 烏瓜提げ無造作の似合うひと
98 白玉やばくちのあとのはしたがね
99 白桃の濡れ身をすする緑かな
100 春ショール男が選ぶ灘のいろ

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