俳句の殿堂

萬翠荘 ホームに戻る俳句の殿堂TOP~俳句の殿堂~ 白炎

白炎(ハクエン)

結社理念

白炎冊子
「自然随順、風土に立脚した清冽な詩情の詠出を目指す。」
これは師東條素香の創刊に当たって掲げられた、我が白炎の崇高なる理念である。句の表現は当然旧カナ韻文である。
今年は創刊20周年を迎えた。ここまで来れば、創刊当時の多くの人々を喪った。しかし、先達を中心とした同信の人々の、互いに支え合う姿には尊いものがある。声を掛け合い励ましあい、手を携えあって進むのが我が信条である。
新年大会、鍛錬句会、南信大会が中心である。

主宰者

白炎主宰 仁科文男
仁科 文男(ニシナ フミオ)
師東條素香が平成4年、白炎創刊。師系は波郷・小林俠子創刊の「火燿」編集長を努められ、師没後「白炎」を創刊された。平成4年、月刊。それが平成12年5月に急逝され、私が継いだ現在である。

連絡先

住所
〒389-1305 長野県上水内郡信濃町柏原80-1

主宰の100句

1 雪来ると眦据ゑて山仰ぐ
2 眦の彫り深め澄む冬の山
3 やまなみに賜ふ眠りのむらさきに
4 凍蝶の水の光輪生みて落つ
5 湖ひとつ月の氷輪浮かみたる
6 山眠る膝に一顆の湖抱き
7 十夜会の万灯道の闇照らす
8 十夜会を包みて尽きぬ星数多
9 お朝事の鉦散りゆけり露の空
10 寒流や身のさときまで尖りゆく
11 寒流の山家洩れくる灯に滾つ
12 淀み出て寒流滾つ針となり
13 凍つる夜の見放くる闇の果て深く
14 凍星へ闇見切り裂ける人の声
15 溢れくる極みを怺へ阿修羅冴ゆ
16 鼬の死空き家裏口雪激し
17 珠と次ぐ水泡一泉冬の月
18 冬霧によろぼふ影の滲み出づ
19 籠りゐる灯をさいなみて冬の風
20 雪の夜の擣衣と思ふ夢覚めし
21 冬の夜の万声尽きぬ詩に遊ぶ
22 明けやらで身の細みつつ悴めり
23 暁闇の音絶えわたる寒気の灯
24 訃報来し冱つる大地に浸りゐる
25 寒雷に捧ぐる焚書ほむらなす
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26 焚火あと嬉々とすだまの闇集ふ
27 熱燗の滾る山家のぼたん鍋
28 風ひとつ雪の生絹を吹きやらふ
29 着膨れの一塊と化し目を研げる
30 かい抱きて眠るすさびの春の夢
31 諳ずる一詩に深む春の闇
32 手に青き一書や愛でつつ春惜しむ
33 漢文字の青き一書や鑑真忌
34 きさらぎの一書眩しみ繙ける
35 きさらぎのひかり一詩に漂へる
36 きさらぎとかなゆるやかに流しやる
37 きさらぎの湖にひかりの息遣ひ
38 目を閉ざしゐてきさらぎの仄明り
39 一書手に頭のくらくらと涅槃変
40 涅槃図を閉ぢてしづかに灯を点ず
41 夕かけてなほうすらひの凝りゆく
42 囀りや過去振り捨てて家壊す
43 さくらの芽見下ろしてゐる地鎮祭
44 初蝶の舞ひあやふくもひかり立つ
45 朧夜の果てなきことば秘むるかに
46 芍薬の影まで重き揺れ見せて
47 春の灯を消して昂ぶる戦記閉づ
48 中尊寺くだるさくらの月見坂
49 春惜しむ金色堂のひかり浴び
50 素香忌の目を閉ざしゐる夜の朧
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51 散り敷ける花の玉砂利大手門
52 ひかりつつ水面揺らげる花筏
53 春兆す笑まひを確と子の婚儀
54 春や子の三十にして一家立つ
55 子が発ちて空きたる部屋に父おぼろ
56 黒姫も空も水漬くや梅雨出水
57 青梅雨の青淵競ひ湛へつつ
58 梅雨晴の翠巒湖に匂ひ立つ
59 涓滴の幽かに山の鬼気迫る
60 生れ出づる白きしたたりおにやんま
61 老鶯の白峰神社ひそと座す
62 白峰に参じ西行月朧
63 春の闇崇徳上皇揺らぎゆく
64 慕ひ行く塔の水煙梅雨深し
65 山の夜を深む葉を研ぎ青薄
66 旱星瞋恚の行方噛みつつも
67 泉汲む屈みて風を解き放ち
68 山清水柄杓に山の鼓動汲む
69 秘めやかに山の巻物落とし文
70 口遊む古歌へ匂へる風涼し
71 涼しくも書き流さるる師の一書
72 あなたなる寂光帰燕つつみけり
73 空高くつつむ帰燕の志
74 姨捨の古歌へ紅葉のいよよ映ゆ
75 夢殿の宝珠のいらか秋惜しむ
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76 揺蕩うてたちまち風の秋の蝶
77 秋蝶の行方湖心に紛れたる
78 かろき舞月光に踏む伎藝天
79 風の座すうてなと開き曼珠沙華
80 曼珠沙華かざしつ寂ぶる能舞台
81 佐渡巡る夢の渚へ花野道
82 秋蝶に遠流のみ魂けぶりゆく
83 真夜の目を見開き枯るる野へ放つ
84 枯すすき舎利よりかろき音立てて
85 背を闇に委ねてゐたり月仰ぐ
86 帚木の峡より淡く霧湧けり
87 万葉の歌碑へ滾つや秋出水
88 磨りつぐやとろりとあをむ墨涼し
89 迷ひ入る秋灯淡き古書の店
90 魂魄の語り合ふかに月澄めり
91 俤の立つや山影霧らひつつ
92 深みゆく霧の夜霧となり果つる
93 秋の日の鎮もりに座す歌人の居(赤彦居)
94 隅もなくいざよふ月へ口遊む
95 あやしくも生ひ出でたるや月かなし
96 うたかたの流れを月へ口遊む
97 あづまぢのあやしきいのち月冴ゆる
98 狂ほしき女人の一書秋時雨
99 夕暮るる色なき風の山仄と
100 身に沁むやふと行き交す眼差しに

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