俳句の殿堂

萬翠荘 ホームに戻る俳句の殿堂TOP~俳句の殿堂~ 阿以

阿以(アイ)

結社理念

阿以冊子
水原秋櫻子の芸術理念である有季定型の伝統を踏まえながら、新しい叙情の道を探るべく発足。
「自然の真」による客観写生ではなく、秋櫻子の言う「文芸上の真」による主観写生で、会員それぞれの個性が光り輝くような、風通しのよい自由闊達な世界を目指している。自由な発想で、森羅万象を、人生を、心で捉えて十七文字に表現できるように努力してゆく。

主宰者

阿以主宰 庄司 りつこ
庄司 りつこ(ショウジ リツコ)
昭和2年徳島県生まれ。
昭和12年山形市に転居。山形県立山形第一高等女学校を経て、山形師範学校女子部卒業後、公立小学校、山形大学教育学部付属小学校に勤務 。退職後、家業を引き継ぎ、現在に至る。
昭和51年「馬酔木」入会。昭和62年「阿以」創刊主宰。平成7年句集『蔵王日和』上梓。平成11年「波」入会、「馬酔木」退会。その間、山形県俳人協会幹事長、副会長を経て、現在名誉会員。

連絡先

住所
〒990-2401 山形県山形市平清水1丁目7番25号

主宰の100句

1 初明り月山の水釜に満ち
2 縫初は小袋ふたつ紅と藍
3 君が息わが息白し初テニス
4 星の子の宿り瞬く小かまくら
5 阿波藍の匂ふ母郷や梅月夜
6 沸々の母の粥欲し春の風邪
7 花の上に雪の月山よこたはる
8 酒絶ちし人の翳りや葛ざくら
9 雉子癒えて森に去りけり辰雄の忌
10 最上紅花摘むやこころも染まるほど
11 掌の蛍こぼれて水の灯りけり
12 亡き母の声する硯洗ひけり
13 色鳥に小窓ひらきて紅の蔵
14 記紀の世の三日月あげて伊勢の宮
15 柿稲架の連なる蔵王日和かな
16 母の忌を明日に父の忌雪降れり
17 スワン見に来し夜の露西亜料理かな
18 嬰児とゐて日向ぼこ飽くことなし
19 蠟涙をいくたび払ふ寒夜能
20 風凍り跫音も凍る寒立馬
21 見はるかす出羽連山や樹氷原
22 青空を雲の帆がゆく樹氷原
23 百彩のヤッケ吐き出す樹氷林
24 ゴンドラが貫く霧の樹氷林
25 誘導鐘音ひとづつ凍りゆく
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26 抱擁のさまの樹氷に雪やさし
27 蔵王山頂孤高の歌碑に春吹雪く
28 眉も髪も霧氷となりぬ夕蔵王
29 瞬くは金瓶の灯か夜の樹氷
30 初蝶の庭に撒きゆく黄のしづく
31 咲ききつて恍惚の沙羅落つるかな
32 殉教の地より湧きしか黑揚羽
33 凍蝶の貼りつく扉あり立石寺
34 囀の茂吉書屋に充満す
35 親と子に書肆の緑陰濃かりけり
36 陰干しの紅花紙や忘れ雪
37 花追ひて花に疲れて旅にあり
38 木の精の呼び合ふ秋気南谷
39 篠笛の澄む夜咄の一会かな
40 春吹雪く茂吉記念館前駅小さし
41 かたまりに目玉の動く蝌蚪の紐
42 小鳥来る椅子に置かれしトーシューズ
43 色鳥や語感やさしき仏蘭西語
44 短日の広場にピエロ無言劇
45 アビニョンの断橋釣瓶落しかな
46 死の村に残る教会蔦紅葉
47 シャガールの青き絵硝子冬日濃し
48 中国の首都アカシアの花月夜
49 長城に花嫁の輿リラ咲けり
50 点々と砂の塚ありゴビタ焼
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51 天馬の夢見て春眠の馬俑かな
52 蟬塚は細身に在す青あらし
53 霧ながれ紅葉谷はた地獄谷
54 鶏に指噛まれたる五月闇
55 地の霊に触れむと花のしだれけり
56 ふるさとの空まで届け鰯雲
57 大旦いのち拾ひし夫とあり
58 初夢の故郷蒼くけぶりをり
59 繭玉のどの繭も持つ夢明り
60 繭雛いづこに目鼻忘れしか
61 月おぼろ病棟に夫置いて来し
62 しぐるるや座繰りの繭の濃く匂ひ
63 元日の光芒のこる入日かな
64 降る雪に箔打つ音のひびきけり
65 月山の風に送られ流し雛
66 堂屋根の雪解しづくの乱調子
67 水底より湧き出づるかに花の影
68 筒鳥や水より暮るる橅林
69 初春や香薫きしむる舞ごろも
70 かなかなや織師のつづる紅と藍
71 藍建ての甕の密語や月明き
72 春宵や影浮き沈む地唄舞
73 薬草も素焼も干され窯の秋
74 水琴窟月のしづくの音ならむ
75 新窯の夜を訪ね来よ雪女
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76 電飾のやうに夕日の軒氷柱
77 染人の藍に祈りの花月夜
78 紙魚あとの著く動員学徒の記
79 邯鄲や残り生に夢いくつ見む
80 寒梅の零れても香の残りけり
81 ふるさとへ帰心やまざり藍の花
82 母恋ひの胸の奥まですだちの香
83 初春や茂吉の山河晴れわたり
84 母の夢子の夢こもる吊し雛
85 天真の夫との余生風薫る
86 立冬の雨しろがねに最上川
87 不器用と言へどわが道草の花
88 夕空へ椋鳥の描ける墨流し
89 匂ふかに雪の音あり初山河
90 いのち彫る阿波人形師秋深む
91 大空へ芽吹かむと木々唄ひ出す
92 花明り母の名残りの遊山箱
93 七草の日を忽然と夫逝けり
94 花の寺詣でて善女にはあらず
95 紅花の荷駄のまぼろし夕大河
96 落蟬のいのちの重み拾ひけり
97 今朝の春あるがままなる道行かむ
98 廃校の時計刻める秋の音
99 オルガンの昭和のしらべ小鳥来る
100 呼声は空耳ならむ枯木星

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